第16話|その優しさの、行き先——占い師篇

なみさん(31歳・仮名)が相談に来たのは、11月の終わりでした。

最初のひと言からして、彼女は少し申し訳なさそうにしていた。「こんなことで相談するのも……」と。

こんなことで、ではない。十分なことだ、と私は思いました。

職場の後輩がパワハラを受けている。見かねて、自分の上司に打ち明けた。

ただそれだけのことが、めぐりめぐって後輩本人の耳に届いてしまった。「バラされた」と思われているかもしれない——そう知って、出勤するのが怖くなった、となみさんは言いました。

生年月日を拝見すると、六白金星。

天の気を受け、義を重んじ、筋を通すことに命を使う星です。金属のように凛として、曲げることのできない芯を持っている。

この星の人は、不正や理不尽を前にすると、体が先に動きます。頭で考えるより前に、もう動いている——そういう人です。

そこに三碧木星の月命が重なっていました。感じたことが、気づけば言葉になっている。これは衝動ではなく、内側から湧き出る誠実さの形です。

「なみさんが動いたのは、理不尽を見ていられなかったから。六白金星の義の力が、そのまま体を動かしたんです」

私はそうお伝えしました。

「だから、悪意はひとつもない。それはあなたの星が持つ、一番まっすぐな部分です」

彼女は少し黙りました。責められることを、どこかで覚悟していたのかもしれません。

でも、私が言いたかったのはその逆でした。

「それはあなたの良いところです。どうか、そこだけはぶれないでください」

後輩の受け取り方は、ひとつではありません。

心配してくれたと感じる人もいれば、自分のことを勝手に話された、と傷つく人もいる。どちらが正しいということでもなく、それぞれの心の傷の形によって、同じ出来事が違う意味を持つのです。

だから今は、自分から説明しに行かなくていい、と私は伝えました。もし聞かれたら、「心配で上司に相談した」——それだけ言えば十分です。余計な言葉は、かえって場を濁すことがあります。

艮宮の傾斜は、「止まる」という力を持ちます。

山は嵐のなかでも動かない。ただ、そこに在る。今のなみさんにとって、その静けさこそが誠実さの一番の表れになる——普段通りに接すること、気まずそうにしないこと、それだけでいい、と話しました。

「怖い、悲しいって思うのは、あなたが人を大切にしているからです」

なみさんは、また少し黙りました。さっきとは違う、静かな沈黙でした。

誰かを守ろうとして傷ついた優しさは、本物の優しさです。

その優しさが届く場所は、きっとあります。今日ではないかもしれないけれど——必ず、あります。

あなたは今、「良かれと思って」した行動を、後悔したことはありますか。

これは、誰かの物語。
そしてきっと——
あなたの物語でもあります。

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